AGAコラム
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記事更新日:2026.04.02
「鉄分が不足すると髪が抜ける」という話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。実際に、鉄分不足は薄毛・抜け毛の原因として医学的に注目されている栄養素のひとつです。男性・女性を問わず、鉄分の不足は髪の質に大きな影響を与えます。
ただし、鉄分と髪の関係はそれほど単純ではありません。1万人以上を対象とした研究では脱毛症患者のフェリチン(貯蔵鉄)が明らかに低いと報告されている一方、差が認められなかった研究もあります。
この記事では、鉄分不足と薄毛・抜け毛の関係を最新の研究データをもとに解説します。ヘム鉄・非ヘム鉄を含む食品の選び方やサプリメントでの補給方法、過剰摂取のリスクまで幅広く取り上げます。
監修医情報
ナチュラルAGAクリニック 院長 新行内 出
経歴
| 2013年3月 | 千葉大学医学部卒業 |
|---|---|
| 2013年4月 | がん研有明病院勤務 |
| 2014年4月 | 東京大学医学部付属病院勤務 |
| 2015年4月 | 大手AGAクリニックA勤務 |
| 2017年6月 | 大手AGAクリニックB勤務 |
| 2021年5月 | ナチュラルAGAクリニック開院 |
資格・所属

鉄分は、血液中のヘモグロビンの材料となる栄養素です。ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ働きを担っています。鉄分が不足すると酸素を運ぶ力が弱まり、体のすみずみまで酸素が届きにくくなります。
鉄分の働きは酸素の運搬だけではありません。エネルギーの産生やコラーゲン合成など、美容面にも深く関わっている栄養素です。
髪の毛は頭皮の奥にある毛母細胞が活発に細胞分裂を繰り返すことで成長します。毛母細胞は全身の中でも特に分裂が速い組織であり、十分な酸素と栄養素を必要とします。鉄分が不足すると毛母細胞への酸素供給が低下し、髪の成長が妨げられて薄毛の原因になります。
また、鉄分が不足した状態の皮膚の細胞ではケラチン(髪の主成分)の合成が低下してしまいます。鉄分は酸素の運搬だけでなく、美しい髪の質そのものにも関わる栄養素なのです。
鉄分不足は髪だけでなく、全身にさまざまな症状を引き起こします。以下のような症状が現れやすくなります。
意外に思われるかもしれませんが、爪や肌の不調と抜け毛が同時に起こっている場合、鉄分不足が共通の原因である可能性があります。心当たりがあれば、医療機関への相談をおすすめします。
健康診断では、貧血の指標としてヘモグロビン値が測定されます。しかし、ヘモグロビンが正常でも体内の貯蔵鉄(フェリチン)が枯渇している「隠れ貧血」の状態が存在します。
隠れ貧血は特に女性に多い状態です。月経による定期的な鉄分の損失に加え、ダイエットによる食事制限や偏った食生活が原因になります。月経のある女性は毎月かなりの量の鉄分を失っており、食事だけでは補いきれないことも少なくありません。
妊娠中や出産後はさらに鉄の必要量が増加するため、隠れ貧血のリスクが高まります。慢性的な疲れやすさや爪のもろさなども隠れ貧血のサインです。
隠れ貧血は明確な症状が出にくく、いつの間にか薄毛が進行していた、というケースも少なくありません。抜け毛や薄毛の原因が不明な場合は、フェリチン値の測定が重要な手がかりとなります。
1万人以上を対象にした大規模な研究では、脱毛症の女性はそうでない女性と比べてフェリチン(貯蔵鉄)が明らかに低いことが報告されています。休止期脱毛(ストレスや栄養不足で一時的に抜け毛が増える状態)の患者では、約半数に鉄欠乏が見られたという報告もあります。
一方で、鉄分と脱毛の間に明確な関連が認められなかった研究もあり、現時点では「鉄分不足は脱毛のリスク因子のひとつだが、唯一の原因ではない」という解釈が妥当です。AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性型脱毛症)が主因の場合、鉄分の補給だけでは改善しません。
男性の薄毛はAGAが原因であることが多く、ストレスや生活習慣、遺伝など複数の要因が関わっています。また、慢性的なストレスは鉄分の吸収効率を低下させるだけでなく、頭皮の血流を悪化させて薄毛を加速させることもあります。鉄分の補給とあわせて、ストレス管理や生活習慣の改善にも取り組むことが大切です。
血液検査における鉄欠乏の診断基準は、フェリチン15 ng/mL以下です。しかし、この基準は貧血の診断を目的としたものであり、美しい髪の質を維持するために必要なレベルとは異なります。
155名の女性脱毛症患者を対象とした研究では、髪の成長に必要なフェリチンの目安は40〜60 ng/mLと報告されています。
| 基準 | フェリチン値 | 備考 |
|---|---|---|
| 貧血の診断基準 | 15 μg/L以下 | 一般的な健康診断の基準 |
| 抜け毛が増え始めるライン | 40 ng/mL未満 | 休止期の髪が増え始める水準 |
| 髪の成長に必要な水準 | 40〜60 ng/mL | 毛髪専門医が推奨する目安 |
つまり、健康診断で「貧血ではない」と言われても、フェリチンが40 ng/mL未満であれば髪への影響が出ている可能性があります。薄毛や抜け毛が気になる場合は、クリニックや医療機関でフェリチン値を含む血液検査を受けてみましょう。
男性・女性ともに、隠れ貧血による薄毛は食事の質を見直して鉄分を補給することで改善が期待できるケースも多いです。

鉄分には、動物性食品に含まれるヘム鉄と、植物性食品に含まれる非ヘム鉄の2種類があります。ヘム鉄は吸収率が15〜25%と高く、非ヘム鉄は2〜5%程度です。
ヘム鉄を多く含む食品・食材
| 食品・食材 | 鉄分量(100gあたり) | 鉄の種類 | 髪に良い他の栄養素 |
|---|---|---|---|
| 豚レバー | 13.0mg | ヘム鉄 | 亜鉛・ビタミンB群 |
| 鶏レバー | 9.0mg | ヘム鉄 | たんぱく質・葉酸 |
| 赤身の牛肉 | 2.7mg | ヘム鉄 | 亜鉛・たんぱく質 |
| カツオ | 1.9mg | ヘム鉄 | ビタミンD・たんぱく質 |
| ほうれん草 | 2.0mg | 非ヘム鉄 | ビタミンC・葉酸 |
| 納豆 | 3.3mg | 非ヘム鉄 | 亜鉛・たんぱく質 |
日本人の食事で摂取される鉄分の多くは非ヘム鉄です。ヘム鉄を多く含む食品を意識的に選び、食べ物の組み合わせで吸収率を高める工夫をしましょう。
なお、レバーなどヘム鉄を含む食品は亜鉛やビタミンB12など他の栄養素も豊富に含まれています。ヘム鉄の多い食材を中心にバランスの良い食事を心がけることが、薄毛対策の基本になります。
鉄分は他の栄養素と組み合わせることで、効率的に体内に取り込まれます。逆に、吸収を妨げる食べ物との組み合わせにも注意が必要です。
鉄分の吸収に影響する栄養素と食品
美しい髪を目指すなら、鉄分だけでなく亜鉛やビタミンB群など複数の栄養素をバランスよく摂取することが大切です。亜鉛はケラチン(髪の主成分)の合成に必要な栄養素で、鉄分と同様に不足しやすいミネラルです。
亜鉛を多く含む食材には牡蠣、牛肉、ナッツ類があります。男性も女性も、これらの食材を日々の食事に取り入れることで、髪の成長を体の中からサポートできます。
以下に該当する方は鉄分が不足しやすいため、意識的な対策が必要です。
セルフケアとして、まずは日々の食生活を見直すことから始めましょう。ヘム鉄を多く含む食品や食材を食事に取り入れ、吸収を高める方法を実践するのが基本的な対策です。
食生活の改善だけでは十分な量を確保できない場合は、医師への相談のうえで鉄剤やサプリメントによる補給を検討しましょう。産後の抜け毛のように鉄分不足が明らかなケースでは、早めの対処が大切です。
食事だけでは鉄分が不足しやすい方にとって、サプリメントは効率的な補給方法のひとつです。種類によって特徴が異なります。
サプリメントをいつ飲むかも大切です。空腹時のほうが吸収効率が高まりますが、胃腸が弱い方は食後でもOKです。ビタミンCのサプリメントと合わせて摂取するとさらに効果的です。
サプリメントはあくまで食事で十分な量の鉄分を確保できない場合の補助的な方法です。まずは食事からの鉄分補給を基本とし、不足分をサプリメントで補うのが理想的です。
なお、亜鉛のサプリメントと鉄分のサプリメントを同時に摂ると互いの吸収を妨げることがあるため、時間をずらして飲む習慣をつけましょう。
鉄分は不足も問題ですが、過剰摂取にもリスクがあります。毛髪研究の第一人者であるRushtonは、サプリメントの過剰な摂取がかえって抜け毛を引き起こす可能性を指摘しています。
「髪に良いから」と自己判断で大量に鉄分サプリを摂取するのは避けてください。まず医療機関で血液検査を受けてフェリチン値を確認し、医師の指導のもとで適切な量を補充するのが安全です。いつまでどのくらいの量を飲むか、必ず相談しましょう。
鉄分は毛母細胞だけでなく、頭皮環境の維持にも深く関わっています。頭皮には多くの毛細血管が集まっており、酸素と栄養素が十分な量届くことで健康な頭皮が保たれます。鉄分の働きによって酸素が頭皮に行き渡ることで、質の高い美しい髪が育ちます。
鉄分が不足すると、以下のような頭皮トラブルが起こりやすくなります。
美しい髪は健康な頭皮から生まれます。鉄分を含む食品や食材をしっかり摂取し、頭皮ケアで頭皮状態を改善するのも効果的です。美容ケアの面でも、頭皮ケアは食生活の見直しと同じくらい重要です。
ストレスや睡眠不足も頭皮環境を悪化させる要因です。慢性的なストレスは全身の酸素消費量を増やし、頭皮への酸素供給が低下します。ストレスが続くと、いつまでも薄毛が改善しないという悪循環に陥りやすくなります。
食生活と生活習慣の改善で鉄分不足を解消できれば、髪の質の回復だけでなく、美しい肌や爪の健康にも効果が期待できます。
鉄分不足と薄毛・抜け毛の関係について、研究データをもとに解説しました。
記事のまとめ
鉄分不足以外にも、薄毛の原因はAGA(男性型脱毛症)やホルモンバランスの変化、ストレスなど多岐にわたります。男性・女性ともに、薄毛の改善には原因に合わせた治療や対策が必要です。肌や爪の不調、疲れやすさなどがある方は、まず食生活や生活習慣の見直しから始めてみましょう。
薬に頼らない治療法については「薬に頼らないAGA治療まとめ」で詳しく紹介しています。原因を正確に特定し美しい髪を取り戻すためには、クリニックでの専門的な診察が効果的です。ナチュラルAGAクリニックの無料カウンセリングでお気軽にご相談ください。
参考文献